韓国語で「ウリ」の意味や使い方、その他の表現

韓国では「ウリ」という言葉をよく使います。日本語の「私たち」「われわれ」にあたる韓国語ですが、日本語の「私たち」「われわれ」よりも意味は多様で、使われ方も幅広いものとなっています。
したがって、韓国語の「ウリ」を使いこなすにはだた日本語の「私たち」に置き換えるのではなく、その広範な意味を正しく理解しておくことが重要です。
そこで今回は韓国語における「ウリ」の意味や使い方などについてまとめてみたいと思います。

●日本語の「私たち」と同じ意味で使う「ウリ」

우리는・우리+名詞(ウリヌン・ウリ)

まずはじめに、日本語の「私たち」にそのまま置き換えが可能な、一人称複数形の代名詞としての「ウリ」です。 우리는(ウリヌン)=「私たちは」と主語にしたり、우리(ウリ)+名詞で所有をあらわす「私たちの」という意味で使い、日本語の「私たち」と同じ、自分を含む複数名をさす代名詞です。
使い方は日本語の「私たち」と同じですので、とくに問題はないでしょう。

使用例
우리는 일본사람입니다.(ウリヌン イルボンサラミムニダ):私たちは日本人です。
우리 결혼했어요(ウリ キョロネッソヨ):私たち結婚しました(韓国の人気バラエティ番組のタイトル)
우리 집(ウリ ジプ):私たちの家

 

●親近感のある相手の名前につける「ウリ」

우리(ウリ)+名前

日本語の「私たち」とは異なる「ウリ」の用法として、親しみを感じている人の名前の前に「ウリ」をつける、というものがあります。
家族や恋人、親友さらには仕事仲間など、自分が身近に感じている人について「自分の属する集団のかけがえのない一員、大切な仲間/パートナー」という思いを込めて使います。
集団性を重んじる韓国文化から生まれた表現であると言えましょう。
あなたが韓国人からこのように呼ばれるということは、相手があなたのことを大切な仲間、あるいはパートナーとして考えてくれているということです。
日本語にない表現なので、日本語訳が少しぎこちない感じがしますが、以下のように使います。

使用例
우리 영주가 최고야!(ウリ ヨンジュガ チェゴヤ!):うちのヨンジュが最高だよ!
・역시 우리 민수밖에 없어.(ヨクシ ウリ ミンスバッケ オプソ):やっぱり俺たちのミンスしかいないよ。
우리 지은이 그럴 수가 없어요.(ウリ ジウニ クロル スガ オプソヨ):うちのジウンがそんなはずはありません。

●家族の呼称につける「ウリ」

우리(ウリ)+家族の呼称

韓国語ではお父さん、お母さん、お兄さん、お姉さんをはじめとした家族の呼称に「ウリ」をつける表現が頻繁にみられます。
つまり、たとえほかに兄弟姉妹がいないとしても、「私たちのお父さん」「私たちのお母さん」「私たちのお兄さん」「私たちのお姉さん」というように、一人称複数を使って表現するのです。
とくに日本語話者がとまどう韓国語の表現の一つに夫や妻にまで「ウリ」をつけて呼ぶことがあります。
日本語では「私の夫」「私の妻」というように一人称単数で表現しますが、一人称複数で「私たちの夫」や「私たちの妻」と言われると、「もしかして、あなたの他にもパートナーが複数いるの?」と違和感を感じてしまいます。

言うまでもなく、現在の韓国では一夫一婦制が採用されており、複数のパートナーと婚姻関係を結ぶことはできません。
このような表現は、家族の集団性を重視する韓国の家族観、すなわち家族を個人のものでなくその集団性から把握しようとする韓国人の感性によるものであると考えられます。日本語の「うちの」という表現に似たニュアンスで使われるものです。

使用例
우리 아빠도 같이 가세요.(ウリ アッパド カッチ カセヨ):うちのお父さんも一緒に行きます。
우리 아내가 지금 집에 없대요.(ウリ アネガ チグム チベ オプテヨ):うちの妻は今、家にいないそうです。
우리 동생도 일본에 있어.(ウリ ドンセンド イルボネ イッソ):うちの弟/妹も日本にいるよ。

●韓民族もしくは韓国国民をあらわす「ウリ」

우리 나라・우리 말(ウリ ナラ・ウリ マル)

あなたは韓国の国歌である「愛国歌」を聴いたことがありますか?その歌詞のなかに「우리 나라 만세(ウリ ナラ マンセー)」という一節が登場します。「私たちの国、万歳」という意味です。
ではここで使われている「ウリ」というのはいったいどういったものなのでしょうか?
「愛国歌」の歌詞はもともと日本の植民地支配に抵抗する運動のなかから生まれたもので、独立運動組織であった大韓民国臨時政府によって国歌として採用され、韓国の独立後に正式に韓国の国歌とされました。
つまり「愛国歌」の「우리 나라 만세(ウリ ナラ マンセー)」という一節には他民族支配から独立し、自分たちの民族による国家の建設への思いが込められているのです。
したがって、この「愛国歌」に登場する「ウリ」というのは植民地支配をする他民族の「彼ら」に対しての「私たち」、すなわち韓民族をさします。
韓国はナショナリズム・民族主義が強い国だと言われていますが、その背景には植民地支配への抵抗の歴史があります。そのため、「私たち」を意味する「ウリ」が韓国社会の主人としての自民族や自国民という意味で使われることが多くあるのです。
우리 나라(ウリ ナラ)=「私たち(韓民族)の国」つまり韓国、우리 말(ウリ マル)=「私たち(韓民族)の言葉」つまり韓国語というような使われ方をします。
韓国に「ウリ銀行」という名前の銀行がありますが、これも「韓国国民の」「国民のみなさんの」という意味で「ウリ」が使われています。

우리 민족의 통일을 기원합니다.(ウリ ミンジョゲ トンイルル キウォナムニダ):わが民族の統一を祈願します。
・배용준은 우리 나라 사람이다.(ペヨンジュヌン ウリ ナラ サラミダ):ペ・ヨンジュンは韓国人だ。
우리 경제는 위기 상태다.(ウリ キョンジェヌン ウィキ サンテダ):わが国の経済は危機状態だ。

まとめ
いかがでしたか?韓国語の「ウリ」は韓国人の集団に対する考え方、さらには韓国の痛ましい歴史が色濃く反映されている言葉です。
言葉にはそれを使う人々の生きざまが刻まれています。ですので他言語を学ぶということは、その言語の背景にある人々の暮らしや歴史にふれるということでもあります。
あなたも「ウリ」をはじめ韓国語のさまざまな用法をマスターすることをつうじて、韓国語を学ばなければ決して知ることのできないであろう韓国人の思考や精神世界にこれからもふれてみませんか?